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政府の「CCS長期ロードマップ(中間とりまとめ案)」の考察

2022年 5月 19日

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桝本量平

政府は5月11日、「CCS長期ロードマップ(中間とりまとめ案)」を公表したので、考察する。 全体感としては、先日レポートした「クリーンエネルギー戦略(中間整理)」と同様に、「CCS長期ロードマップ(中間とりまとめ案)」も、 “具体的な決定事項”はまだ乏しいものの、以下3点により、CCS事業の立ち上げに向け、急ピッチで作業が進んでいる印象である。 なお、同ロードマップは今後、「クリーンエネルギー戦略」に反映される。

第一に、政府が「2030年までのCCS事業開始に向けた事業環境整備」にコミットし、2022年内にCCS事業に関する法整備の論点を整理し、 その後、早急に法整備を行うことである。特に、「長期責任」の法整備が求められており、地下に貯留したCO2が漏れ出ていないことを、無限の期間にわたって企業が責任を持つとなると、 誰もCCS事業を行わないため、一定の期間後は、国に責任が転嫁することなどが想定されている。

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第二に、政府支援の在り方として、「政府として、少なくともCapex、Opexの全額負担しないと、事業者がCCS事業に取り組むインセンティブが発生しない」、 「海外では、Capex・Opexを通じた事業全体での補助率はほぼ100%」などと整理されていることである。まだ決定事項はないが、この資金負担面での議論の進展は、とても大きい印象である。

第三に、国内のCO2貯留ポテンシャルとして、3D弾性波探査などの調査により、11地点で約160億トンの貯留可能量が推定されていることである。 “日本国内にはCO2の適地は乏しい”というのが従来の一般的な見方であり、にわかには、全てが事業化できる分量とは思わないが、 政府は“これまでの適地調査で解析してきたデータ”を民間へ貸し出すとしており、事業化に向けた検討が進むと思われる。 なお、日本のCO2排出量は年間10億トン程度であり、(今後、排出削減を進めた上で)2050年頃には年間1.2~2.4億トンのCCSが目安とされているため、 160億トンという貯留可能量は70~130年分と、かなり巨大であることがわかる。

(以上)

免責事項:本稿は著者の個人的見解であり株式会社INPEXソリューションズの見解ではありません。