知見/レポート
ウクライナ危機の中東における反映 -浮かび上がる危うさとは-
2022年 3月 10日
ロシアのウクライナ侵攻は、欧州の国際秩序と安全保障の状況を一変させている。これは欧州以外の世界にも影響を及ぼしており、中東地域も例外ではない。 2月下旬からこれまで2週間の間に起こった、中東地域に関係する事柄を、羅列的にはなるが取り上げ、そこにある危うさを見ていきたい。
1. 国連非常任理事国UAEのロシア非難決議「棄権」投票
2月25日に国連安保理で採決が行われた、ロシアによるウクライナ侵攻の非難決議は、ロシアの拒否権により否決されたが、15理事国(*)のうち、中国とインド、UAEの3か国が棄権した。 中国とインドが棄権に回ることは、両国の現在および過去の歴史的なロシア(及びソ連)とのつながりを考えればうなずけるものがあるが、「なぜUAEは棄権?」
2月25日安全保障理事会 (写真:日経)
米国が主導して80カ国を上回る加盟国が提案に加わっていたこの決議案は、ロシアの拒否権が当然視されるとはいえ、ロシア、中国以外の「国際社会の決意」を示そうとしたものであった。またブリンケン国務長官はアブドッラーUAE外相に電話し、この決議の重要性を強調したと伝えられる。それだけに、UAEの棄権は「反乱」と受け止められるほどの衝撃があった。
UAEの国連大使は「包括的な話し合いを中心としたプロセスを重視する」と述べて、棄権の理由は明言しなかった。またUAEのガルガッシュ外務担当大臣は、「どちらか一方の側についたのでは問題の解決に役割を果たすことはできない」として「仲介者」となるべく棄権を選択したとしている。
UAEのLana Nusseibeh国連大使 (写真:日経)
UAEのAnwar Gargash外務担当大統領顧問 (写真:AFP)
ウクライナ危機でのロシア非難・撤退要求決議は、安保理では採択されなかったが、3月2日に国連緊急特別総会が開かれ、141カ国賛成、5カ国反対、35カ国棄権で採択された。上のような説明をしたUAEは、仲介者として今回も棄権したのか、と思ったら、総会の決議では賛成に回っている。あれ? つじつまが、、、 では、何がUAEをして「棄権」させたのだろうか? それは以下の3つが考えられる。
(ちなみに中東諸国で、国連緊急特別総会決議に反対したのはシリアだけ。棄権したのはイラン、イラク。この顔ぶれはまぁ納得。)
(*)2022年の安全保障理事会のメンバーは、米露中英仏の5常任理事国に加えて、非常任理事国はアルバニア、ブラジル、ガボン、ガーナ、インド、アイルランド、ケニア、メキシコ、ノルウェー、UAE。
① 米国外交政策への不満 - F35の意趣返し
サウジアラビア、UAE等の湾岸諸国は、2011年の「アラブの春」での米国の対応、また2015年のイランとの核合意調印から、オバマ元米大統領は長年のパートナーであるアラブ諸国の利益を無視したと受け止めて、米国歴代政権の中東離れに不満を抱いてきた。バイデン政権になってからは、サウジアラビアには、人権侵害批判とカショギ事件を理由とするムハンマド皇太子との対話拒否に不満を持つ。UAEにしても、米国のF35戦闘機の使途に関する米政府の制限を大いに不満として、UAEはF35購入計画に関する交渉を中止している。サウジアラビア、UAE両国は、イエメンのフーシー派からのミサイル・ドローン攻撃に対する、バイデン政権の半端な対応にも大きな不満を持っている。
F-35 (写真:USAF)
また、現在バイデン政権が進めているイランとの核合意再建交渉では、バイデン政権はイランと間接交渉を行うなかで、サウジアラビアやUAEの求めに応じることには消極的な模様であり、そうした行動はイエメンの人道危機を悪化させるとしている。
この状況でのUAEの安保理決議案への「棄権」は、「米国の外交政策に対する不満の表れ」と見ることができる。UAEの政治学教授アブドルハレク・アブドラはフィナンシャル・タイムズ紙に、「我々はもう、自国の国益について決断を下すために米国や他の西側諸国から承諾を得る必要はない」、「賛成でも反対でもない、というのが我々の立場だ。米国が不愉快に思うなら、同じレベルに立ってもらうしかない」と述べ、 「それは何ら驚きにあらず、これまで態度表明を控えていたほとんどのアラブ諸国の尊敬と共感さえ獲得した」としている。
② ロシアとUAE(+サウジアラビア)の票の取引 - フーシー派への安保理武器禁輸決議
国連安保理は、2月28日月曜日に、UAEが提出した、フーシー派をテロリスト集団と位置づけて、既存の武器禁輸の範囲を拡大し、フーシー派幹部に対する金融制裁と渡航禁止を1年間延長する、安保理決議2624号を、11か国の賛成で決議した。理事国のうちアイルランド、メキシコ、ブラジル、ノルウェーは人道的な懸念を表明し、棄権した。安保理では、これまでの決議でフーシー派の指導部への武器の輸出を禁止しているが、今回の決議で今後は武器輸出禁止の対象がフーシー派全体に広げられることになり、またフーシー派はテロ組織とされた。
これまでロシアは、イランが支援するフーシー派に不利益となる措置には後ろ向きであった。2015年のフーシー派に対する武器の禁輸措置を決めた安保理決議2216号では、ロシア1国のみが棄権している。また2018年の武器禁輸の延長を決めた安保理決議では、イランの武器提供を懸念する文言の入った英国案をロシアが拒否権で否決し、これに言及しないロシア案が採択された。しかし今回の安保理決議2624号では、ロシアは拒否権を行使せず、また棄権することもなく、UAE提案の決議に賛成した。
フォーリン・ポリシー紙は、国連国際危機管理グループのリチャード・ゴーワンの、「UAEにとって、イエメンの状況は国家の優先事項であり、米国とロシアの拒否権の間のトリッキーなコースを操縦することを意味する」とこの言葉を引用し、UAEのイエメン決議に対するロシアの拒否権の可能性を避けるために、UAEがウクライナ決議を棄権したと考えている、との外交筋の見方を紹介している。
③ ロシアとのOPECプラス体制の維持優先
サウジアラビア・UAEとロシアはOPECプラスを通じてエネルギー分野などで連携を深めている。3月のOPECプラス閣僚会合は2日に開かれ、米国・西側諸国のOPECへの積極的な増産の要請にもかかわらず、既定路線である4月の40万b/dの増産を確認して、短時間で終了した。サウジアラビアとUAEは、ロシアとのOPECプラスの枠組みを維持する道を選んだ。(詳しくは後述)
上記①〜③のいずれの理由にしろ、というか全部でしょうが、米国への信頼と存在感の低下が、安保理でのUAEの棄権のベースにある。中東湾岸諸国の米国への不信感は、アフガニスタンのターリバーン化を防げなかったことでさらに深まっている。サウジアラビアやUAEにとって米国が第1の外国パートナーであり、その安全保障の傘の中にあることに変わりはないが、それはもはやかつてのような絶対的な存在ではない。湾岸諸国はそれぞれ自国の国益を第一に考えて行動する時代となっており、米国の空白をロシアや中国にヘッジしている。
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・ロシア非難決議否決 日本など80カ国超賛同も―国連安保理
時事通信、2022年2月26日 -
・Russia-Ukraine war: UAE not 'taking sides' as Gulf countries remain quiet
Middle East Eye, February 27, 2022 -
・Gulf states’ neutrality on Ukraine reflects deeper Russian ties
Financial Times, February 28, 2022 -
・[FT]ウクライナ侵攻非難を棄権したUAE ロシアと利害
日本経済新聞、2022年3月1日 -
・「ロシア即時撤退を」国連決議141カ国賛成、5カ国反対
日本経済新聞、2022年3月3日 -
・Security Council Renews Arms Embargo, Travel Ban, Asset Freeze Imposed on Those Threatening Peace in Yemen, by 11 Votes in Favour, None against, 4 abstentions
United Nations, February 28, 2022 -
・UN Security Council calls Houthis a terrorist group for first time, expands arms embargo
Arab News, February 28, 2022 -
・Ukraine Crisis Spills Into Yemen Diplomacy
Foreign Policy, February 28, 2022
2. 石油価格高騰にもかかわらず既定路線を堅持するOPECプラス
サウジアラビア・UAEとロシアはOPECプラスを通じてエネルギー分野などで連携を深めている。3月のOPECプラス閣僚会合は3日に開かれ、既定路線である4月の40万b/dの増産を確認して、短時間で終了した。米国・西側諸国は、ウクライナ危機とロシアへの経済制裁で予想される石油市場の混乱に対抗するため、サウジアラビア・UAEとOPECに対して、より積極的な増産を働きかけたが、それは拒絶された形となった。ウクライナ危機により上昇していた油価は、これにより翌3月3日にWTIは107.67ドル、ブレントは110.46ドル、4日にはWTIは115.68ドル、ブレントは118.11ドルと一気に100ドルを超えて上昇した。IEAのピロリ事務局長は、OPECプラスの決定に「失望」したと言った。
(出典 ニッセイ基礎研究所)
(出典 Investing.com)
15分で終わったとされる会合では、ウクライナ危機に関する直接的な言及は全くなく、「現在見られている市場のボラタリティーはファンダメンタルズの変化によるものではなく、地政学的な動向によるもの」との声明があり、既定の政策を変更する必要のある石油の不足はないとした。尤も、OPECプラスが40万b/d以上の増産を打ち出すとしても、ここ数カ月の減産緩和の結果から見て、実際に増産能力を持つのはサウジアラビアとUAEくらいであろうと言われている。
(出典 日本経済新聞 2022年2月3日)
OPECはその歴史の中で、政治上の問題を回避し、市場管理を最優先事項としてきた。1960年の創設以来、イラン革命とイランイラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争、リビア内戦など、加盟国間の武力衝突時であっても組織は解体されずに機能した。OPECプラスも2016年以降、一時期を除いて石油市場の管理において参加各国の利益となっており、その団結を維持することに利益を見出している。2020年春のサウジアラビアの単独行動による原油価格大暴落は、強い教訓となっており、もう一方の雄であるロシアとの協調による枠組み維持が最優先事項で、ロシアと西側諸国の紛争では「中立」を維持しようとしている。
(写真:Arab News)
閣僚会合に先立ち、MbZは1日にプーチン大統領と電話で会談しており、2人は「両国関係」やエネルギー市場、「ウクライナ情勢」について話し合ったと伝えられる。ロシア側は、二人は「世界のエネルギー市場に関する調整を継続することを約束」したと伝え、またウクライナについて「モハメド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤンは、ロシアには国家安全保障を確保する権利があることを再確認した」と書いている。一方、MbSは会合後の3日にプーチン大統領と電話会談を行い、「ウクライナ紛争の当事者間の仲介に全力を尽くす用意がある」と述べたと言う。確かに彼はゼレンスキー大統領にも電話をしている、が、その後の展開があったとは聞かない。それよりは、OPECプラスの役割と、それを維持することの重要性を強調したと伝えられるところが主目的なのだろう。これは、この電話でプーチン大統領が強調した「世界的なエネルギー供給の問題を政治化する(=制裁)ことは容認しがたい」への、MbSの返事となる。
OPECプラスの減産枠組みは、今年後半に期限を迎える。OPECとロシアは、その後も長期的な関係を結んでいくと思われる。ロシアが、ウクライナの泥沼や制裁の網にからめとられなければ、の話だが。
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・OPECプラス、価格急騰でも追加増産見送り ウクライナ言及せず
ロイター、2022年3月2日 -
・Mohamed bin Zayed discusses Ukraine crisis and energy market developments with Russian President
Emirates News Agency, March 1, 2022 -
・Crown Prince of Abu Dhabi notes Russia’s right to ensure national security — Kremlin
TASS Russian News Agency, March 1, 2022 -
・Putin and Abu Dhabi Crown Prince hold talks on OPEC+ strategy
S&P Global Platts, March 1, 2022 -
・Crown prince says Saudi Arabia ready to mediate between Russia, Ukraine during calls with Putin, Zelensky
Arab News, March 4, 2022 -
・Putin Warns Saudi Crown Prince Against Politicizing Energy Issues
The Wall Street Journal, March 3, 2022
3. JCPOA再建交渉へのロシアの「置き石」
最近、「近々、JCPOA再建が合意される。経済制裁が解除されイランの石油が市場に戻ってくる」と言うことが言われるようになっていた。イランと米国の間接交渉はほとんど終了し、後はそれぞれの政治決断にかかっていると言われていたところに、当事者の1国であるロシアによるウクライナ侵攻が勃発した。
このウクライナ危機がJCPOA再建交渉に影響を及ぼすか、及ぼすとすればそれは合意に否定的なものか、肯定的なものか? いろんな見方がある中で3月5日、ロシアのラブロフ外相は、キルギスのカザクバエフ外相との共同記者会見での記者からの質問に対して、「ロシアへの制裁が、JCPOAで規定される、自由で本格的な貿易と経済投資協力、イランとの軍事技術協力に対するロシアの権利に影響を与えないという、最低限の国務長官レベルでの書面による保証」を望んでいると述べた。これはJCPOAを、欧米諸国からロシアに対する制裁の解除と関連づける、交渉材料とする、という見解を示したことになる。ブリンケン国務長官は6日、ロシア制裁と再建されるJCPOAは無関係だとして、ロシアの要求を却下した。一方のイランにとっても、再建交渉の最終段階で、思いもしなかった障害を抱え込んだ格好になる。7日、イランのハティーブザーデ外務報道官は、このラブロフ外相の発言について、ロシア側に正式に説明するよう求めている、と述べた。イランのアブドラヒアン外相はラブロフ外相との電話会談で、「イランは戦争と制裁に反対する」と述べている。
(写真:CNN)
(写真:IFP)
イランのバゲリ・カニ首席交渉官は、月曜遅くに「短期間の協議」のためにテヘランに戻った。ロシアの「置き石」を避けて、交渉はいよいよ大詰めか。
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・Iran Nuclear Deal Inches Toward Revival but Faces Critics in U.S.
The New York Times, February 17, 2022 -
・How will the Russia-Ukraine war affect Iran nuclear talks?
Middle East Eye, March 4, 2022 -
・Russian demand for sanctions relief threatens Iran nuclear talks
The Washington Post, March 5, 2022 -
・Blinken says new Russia demands on Iran nuclear deal 'irrelevant'
France 24, March 6, 2022 -
・Iran Awaiting Russia’s Official View on Sanctions: Spokesman
Tasnim News Agency, March 7, 2022 -
・Iran says won’t endanger national interests after Russian demand
Al Jazeera, March 7, 2022 -
・Iran-Russia Ties Should Be Unharmed by Sanctions: Amirabdollahian
Tasnim News Agency, March 8, 2022
4. 『パンかご』に起こった戦禍 中東への影響
戦場となっているウクライナは世界有数の穀物輸出国だ。またウクライナ侵攻を行い、経済制裁を受けているロシアもまた、ウクライナ以上に穀物の輸出国である。ロシアとウクライナを合わせた小麦の世界輸出市場のシェアは25%を占める。下の表は10年前のデータだが、ロシア・ウクライナの穀物の輸出相手は、エジプト・トルコ・サウジアラビア・イラン・イスラエル・シリア・チュニジアの名前が並ぶ。中東諸国は、この大穀倉地帯から大量の小麦などを輸入してきたが、ウクライナ危機で両国からの穀物輸入が止まるのではないかと、中東各国は恐れている。実際、大手穀物商社がウクライナに持つ穀物輸出ターミナルの稼働は止まっており、黒海沿岸最大のウクライナ·オデッサ港の船舶入出港が統制され、小麦の輸出がすべて中断されている。ウクライナからの輸出が止まることに加えて、ロシアが制裁への報復措置として小麦の輸出を制限すれば、需給逼迫が起こる。ウクライナでは小麦の作付けが毎年8~9月ごろ、収穫は翌年7~8月ごろに行われるが、ウクライナ危機が7月まで続いた場合は、世界の小麦の供給は大幅に減少することが予想される。
この状況を受けて、小麦の先物価格は急騰しており、穀物価格の国際指標とされるシカゴ商品取引所(CBOT)の先物市場では、3月7日の取引で1ブッシェル(=約27kg)当たり1,363セントとなり、過去最高の高値となった。
(出典 JETRO Area Report 2014年)
(出典 毎日新聞 2022年3月8日)
ここ10年間のロシアとウクライナの輸出先地域に共通しているのは、アフリカ(主に北アフリカ)と中近東への輸出比率が非常に高いと言うことで、具体的な国で言えば、エジプトが最大の穀物輸出相手国であり、トルコ、イラン、サウジアラビア、バングラデシュ、イスラエル、リビアなども共通の大口輸出先となっている。これは、黒海の積出港から、ボスポラス~ダーダネルス海峡を通って地中海、紅海、インド洋の沿岸諸国に運びやすいことが第一にある。また両国の穀物の品質の点から、他の産地と比べて価格が比較的安く、アフリカ・中東諸国が手を出しやすいと言うことがある。
例えばエジプトだが、人口1億人を超すエジプトは小麦の国内生産は盛んだが、それだけでは国内需要を満たせず、自給率は43%にとどまり、世界最大級の小麦輸入国となっている。日経の記事によると、輸入先は約6割がロシア、約2割5分がウクライナとなっている。
(出典 The Asahi Shimbun GLOBE 2021年1月12日)
(出典 日本経済新聞 2022年2月12日)
ウクライナ危機が深刻化する中で、エジプトのマドブリ首相は「紛争の影響は避けられない」と、事態を深刻に見ている。エジプトはパンなど食料価格を抑えるため、年間数十億ドルの補助金を支出しており、小麦の価格の上昇がさらなる財政圧迫につながるのは避けられない。
エジプト以外の中東地域ではトルコ、アルジェリア、モロッコなども大量の穀物を輸入する。経済的、社会的、政治的危機に見舞われている国々、例えばレバノンは両国から穀物の40%を輸入しており、ウクライナ危機の影響は大きいだろう。リビアではすでに穀物市場で小麦価格が上昇していると報じられた。内戦中のイエメンもやはりロシアやウクライナからの輸入に頼る。購買力の弱い紛争下の国々では今後、食料の確保が困難になることが予想される。
主食である小麦やパンの価格高騰は、10年余り前の「アラブの春」の引き金の一つになったとされる。干ばつによってロシアが小麦の輸出を禁止して小麦価格が上がったことで、中東や北アフリカ地域が小麦不足に見舞われ、政権への不満が高まったという説明だ。今回の侵攻による小麦価格の上昇によりこの歯車が回り出して、中東地域の治安悪化を招くこともあり得る。各国指導者にとっては、統治に直結しかねない死活問題となっている。
ロシアとウクライナの穀物を輸入していない日本は関係ないかと言えば、ロシア・ウクライナの穀物が出てこなくなれば、中東や北アフリカは北米やオーストラリアから小麦を輸入しなくてはならなくなる。よって世界の需給は逼迫して、小麦価格が上がり、日本も影響を受る。これは他の穀物も同じ構図となる。
ロシア・ウクライナで生産されている「冬小麦」が収穫される7月までにウクライナ危機が収拾されていなければ、中東に本当の食料危機がやってくる。
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・ウクライナ緊迫、穀物相場に火種
日本経済新聞、2022年2月12日 -
・穀倉地帯の戦火、恐れる中東 小麦輸入止まる?不安解消に躍起だが…
朝日新聞、2022年3月6日 -
・穀物大国ウクライナ、輸出危機が世界脅かす
The Wal Street Journal (日本語版)、2022年2月28日 -
・ウクライナの危機は中東の食料危機?
Yahoo News、髙岡豊、2022年2月27日 -
・続:ウクライナの危機は中東の食糧危機?
Yahoo News、髙岡豊、2022年2月27日 -
・ロシア・ウクライナ紛争が中東の食糧暴動を引き起こす可能性:アナリスト
Arab News (日本語)、2022年3月6日
(番外) ウクライナの戦場にリクルートされるシリア人傭兵
最近、ロシア及びトルコが、ウクライナの戦場にシリア人傭兵を送り込むために、シリアで傭兵募集を行っている、との報道を目にするようになった。(トルコの行動はウクライナ支援) 米国防総省のカービー報道官も、ロシアによるシリア人傭兵募集の情報を、3月7日記者会見でふれているが、情報戦が戦われている今回のウクライナ危機では、その情報の真偽を考える必要がある。下の、中東調査会の「中東かわら版」ではその考察を行っており、ロシアの行動とされる情報はリビアでの実例があること、トルコの行動とされる情報は動機の点で信ぴょう性が低い、として、「シリア人リクルートの情報は注意深くフォローする必要がある」としている。いずれにしろ、他国の戦場まで行って命を張って金を得なければならないほど、シリアはひどい状態だということだ。
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・No.124 シリア:ウクライナでの戦闘任務にシリア人をリクルートの情報
(財) 中東調査会 中東かわら版、2022年3月9日
(以上)
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